

世界における再生可能エネルギー設備容量の記録更新も、2030年までの再エネ3倍目標の達成にはさらなる加速が必要
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IRENA及びCOP30ブラジル議長国によるグローバル進捗報告書では、再生可能エネルギー投資、グリッド、サプライチェーンの課題を指摘し、COP30閣僚級非公式準備会合(プレCOP30)にて各国政府に対して再エネのより野心的な目標設定を提言
アブダビ(アラブ首長国連邦)/ブラジリア(ブラジル)2025年10月14日 – 昨年は記録的な再生可能エネルギーの設備容量の拡大を記録したものの、2030年までに2022年比で再生可能エネルギー設備容量を3倍、エネルギー効率の年間改善率を2倍にするという目標達成に遅れをとっていることが、ブラジリアで開催された国連気候変動枠組条約第30回締約国会議 閣僚級非公式準備会合(プレCOP30)にて国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、COP30ブラジル議長国、世界再生可能エネルギー同盟(GRA)が本日発表したグローバル進捗報告書で確認された。
2024年に世界の再生可能エネルギー容量の増加は記録的な582 GWに達した。しかし、これは依然としてCOP28 UAEコンセンサスの2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍の11.2 TWに増やすという国際目標達成に向けた軌道に乗るには不十分である。UAEコンセンサスの第2回の公式追跡となる本グローバル進捗報告書によると、この目標を達成するには、2025年以降毎年1,122 GWという大規模な追加設備容量が必要となり、今後10年間で年間成長率を16.6%に加速する必要がある。
本グローバル進捗報告書 「Delivering on the UAE Consensus: Tracking progress toward tripling renewable energy capacity and doubling energy efficiency by 2030」 では、エネルギ ー効率の改善も再エネ拡大と同様に大きな課題であると強調されている。 2024年における世界のエネルギー原単位の改善率はわずか1%、UAEコンセンサス目標の達成および1.5℃目標の維持のために必要な年率4%の改善率を大きく下回っている。
これらを受けて、本報告書では、以下の対応を要請している。
- ブラジル・ベレンで開催されるCOP30に先立ち、野心的な再生可能エネルギー目標を国家気候計画(NDC 3.0)に統合すること。
- 世界の再生可能エネルギー目標と整合させるためにNDCの野心を世界全体で倍増させること。
- 再生可能エネルギーへの投資を2025~2030年に少なくとも年間1.4兆米ドルに拡大し、2024年に6,240億米ドルから倍増させること。
本報告書の調査結果を受けて、アントニオ・グテーレス国連事務総長は次のように述べている。「クリーンエネルギー革命は止められません。再生可能エネルギーは化石燃料よりも迅速かつ安価に導入され、成長、雇用、さらには手頃な価格の電力供給を促進します。しかし、1.5℃目標達成の可能性を維持する機会は急速に失われつつあります。私たちは、あらゆる場所のすべての人々のために、公正なエネルギー転換を強化し、その規模を拡大・加速させなければなりません。」
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のフランチェスコ・ラ・カメラ事務局長は次のように語る。「世界は再生可能エネルギー容量の記録を更新してきましたが、記録だけでは1.5°Cの気候変動目標を達成できません。再生可能エネルギーは最も費用対効果の高い気候変動対策であるだけでなく、現代の最も大きな経済的機会の一つでもあります。この報告書は、再エネ拡大の加速、電力グリッドの改善、クリーンテクノロジーの拡大、サプライチェーンの強化、のそれぞれの道筋を示しています。1ドルの投資ごとに、経済成長、雇用、エネルギー安全保障がもたらされます。世界の再生可能エネルギー目標に向けた進捗状況を追跡する公式管理機関として、IRENAはさらなる再エネの野心拡大を求めています。主要経済国は目標を引き上げ、資金を動員し、協力を深めることで、エネルギー転換を主導し、COP30を画期的なものにすることができます。」
世界再生可能エネルギー連合のベン・バックウェル議長は次のように述べている。「民間部門はエネ ルギー転換を推進しており、世界のクリーンエネルギー投資の 4分の3を占めています。風力、太陽光、水力発電を筆頭とする世界の産業は、すでに成長、雇用、そして安全保障をもたらしています。今、私たちに必要なものは、国家の野心と一致する長期的な政府計画であり、その計画を実行するプロジェクト・パイプラインの増強です。この計画は、送電網と蓄電設備に関する有効な施策の実行を促し、エネルギー転換のメリットを最大限に高めるものでなければなりません。本報告書は、再生可能エネルギーの拡大が進行中であり、私たちはその歩みを加速させる時が来ていると伝えています。」
本報告書が提言する通り、世界の主要先進国・新興国が共にエネルギー転換を主導する必要がある。G20諸国は2030年までに世界の再生可能エネルギーの80%以上を占めると予測されており、G7の主要先進国は、この10年以内に世界の発電能力のシェアを約20%にまで引き上げることで、指導的役割を担うことが期待されている。
主要国は気候変動対策資金の調達を実現し、アゼルバイジャンのCOP29で合意された気候資金に関する新規合同数値目標(NCQG)の年間3,000億米ドルの下限を達成し、さらに1.3兆米ドルの目標に向けて規模を拡大する必要がある。
本報告書は、再生可能エネルギー以外にも、太陽光、風力、電池、水素、グリッド、サプライチェーン、クリーンテクノロジー製造への投資が緊急に必要であることを強調している。
2024年に再生可能エネルギー投資は7%増加したものの、国際目標に向けて再エネプロジェクトを加速させるために必要な水準を依然として大きく下回っている。サプライチェーンに関しては、重要な再エネ技術について公正かつ透明な貿易慣行を確保し、主要な材料や部品の貿易経路を確保するための国際協力を推進する必要がある。
さらに、電力の改善と拡大への戦略的投資は、新たな再エネ設備容量をグリッドに統合し、エネルギー安全保障を強化するための不可欠な基盤となる。現在から2030年までの間に、毎年推定6,700億米ドルの投資をグリッド・インフラに投入する必要があり、エネルギー貯蔵ソリューションを急速に 拡大し、再生可能エネルギーの統合を促進し、送電網の安定性を確保するためにさらなる投資が必要となる。
「UAEコンセンサスの実現: 2030年までに再生可能エネルギー容量を3倍、エネルギー効率を2倍にするための進捗状況の追跡」を読む